前書き
この記事は、外資系クラウドベンダーの中の立場で書いています。実際、社内配信した記事を一部変更した内容です。ユーザの方々にも、我々がこんな苦労をしていると知っていただけると幸いです。
そもそもクラウドベンダーにおけるエスカレーションって何?
「またお客様に怒られちゃったよ。エスカレーションしなきゃ。気が重いなー」
そう、嫌ですよねエスカレーション。そもそも、なんでエスカレーションするの?いや、そもそも、エスカレーションって何でしたっけ?
ウィキペディアを見てみると、こんな風に書いてあります。
エスカレーション(英語:Escalation)とは、業務において、上長の指示を仰いだり、業務を引き継がせること。略語はエスカレまたはエスカ
原義は「上申」や「深刻化」であり、日本語では、「上申」とまで言うと大袈裟な、業務上日常的に発生する、上長への報連相といった意味で使われている。
そうでしたっけ?何か違いますよね。
何故、お客様は、エスカレーションさせたがるんでしょうか?
それを受けて本社の運用部門や開発部門に情報を求めても、そんな事を要求してくるのは一部のお客様だけだと言われ、下手をするとお客様の期待値コントロールが出来ていないと怒られてしまうことも多々あります。外資系の場合、本社は強い。なかなか日本の言う事を聞いてくれないのですよ。
でも、お客様だって困っているんです。だって、上司や他の部署、もしくは本社から同じ事を言われているんです。
想像するに、こんな会話がどこかで行われているかもしれません。
「XXXの動きが悪いから納期が遅れる?冗談じゃない。早急に本社にエスカレーションさせて開発責任者に問題の重要さを伝えて貰え!」
ここで期待値のずれが発生します。お客様は、会社(本社)の上層部に問題の大きさを伝えれば、全ての物事が早く進むものと思いがちです。でも、本当にそれで早まるんでしたっけ?本当は、現場は怠けているわけじゃなくて一生懸命やっているんです。そこに、上から「日本から、君たちの動きが悪いし対応が悪いから、お客様が怒っているって言われているけど、本当にそうなのか?」と言われちゃう。そこで産まれる日本への悪感情。最悪です。じゃあ、どうすれば、上手くエスカレーションして本社を動かすことが出来るんでしょうか?
感情というやっかいな生き物
さて、少し時間を戻しましょう。
お客様に怒られてエスカレーションしろと言われた時、我々にどういう感情が生まれますか?
気持ちよく、「はい!分かりました!」となる方は、よほど大人か、状況が分かっていないか、どちらかだと思います。
ここで、少し豆知識を。
キュープラー・ロスの喪失の5段階というのはご存じでしょうか?
元々は死の受容時の感情の動きを表したものなのですが、これをベースにショッキングな事が起きた時の心理変化に置き換えて説明する事も多いらしいです。
その5段階は、大体、以下のような感じです。
第1段階:否定
「そんなことは起こらないから大丈夫」と自分に言い聞かせる
第2段階:怒り
`本当に変化が起きたことに対して怒りを感じる
第3段階:分析
これから起こる変化を予測し、対応について考えを巡らす
第4段階:受容する努力
現実として受け止め、適応することを試みる
第5段階:コミットメントの成長
変化の良い点を見出し、前向きになる
完全に合致はしないかも知れませんが、お客様に厳しく言われた時には、第一段階から第二段階に近い感情が生まれているはずです。ですので、その感情を持ったままエスカレーションに望むのではなく、自分の感情をできる限り早く第三段階に進めるのが重要ですね。エスカレーションで怒りをぶつけてしまうのは御法度です。
エスカレーションには何が必要なのか?
「さて、感情も収まったし、早速エスカレーションだ。
お客様の売り上げを書いて、どれだけ営業損失があるかを訴えなきゃ」
ちょっと待った。それだけで本当に大丈夫ですか?
何か忘れていませんか?
本社開発部門の優先順位を上げるためには、カスタマーシナリオが必要です。
では、カスタマーシナリオって何でしょうか?
・お客様は何を困っているのか?
・何故、この問題がお客様にとって重要なのか?
・これをやらないことで、お客様と我々に、どのような不利益が生じるのか?
・あるいは、やったことで、何が解決して、どのようなメリットがあるのか?
「そう言われてもちゃんと書いてますよ。この問題が解決しないと1千万円の損失ですもの」
違います。それはカスタマーシナリオではありません。
何故損失になるのか?その理由と背景にあるストーリーをしっかりと伝える努力をしましょう。
お客様が困っている姿をビジュアルで想像出来るようなストーリーになってますか?
開発部門が、「確かに、それは困るよね」と言ってくれるような内容になってますか?
そこを意識したカスタマーストーリーを伝えるだけで、エスカレーションの結果は変わってくるはずです。
エスカレーションの結果、お客様が納得する対応が出来たけど、それで終わりだっけ?
やっと終わった。これで一安心。日本のチームの皆さんありがとうございます。サポートも営業も頑張ったね。
何か忘れてませんか?その感謝、グローバルの人達にも伝えてますか?
ぜひ、問題が片付いてほっとした後に、協力してくれたグローバルの人達にも感謝を伝えて下さい。
それによって、次回のエスカレーションでのグローバルの対応も変わってくるはずです。One Teamってそういう事ですよね。
まだまだ伝えたい事は沢山ありますが、本日はここまで。
ただでさえ辛くて大変なエスカレーションですから、ここは楽しむつもりで、チーム一丸となって頑張って行きましょう。